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20111223

「世界一予約の取れないレストラン」である理由

エル・ブリ。カタルーニャ地方のカラ・モンジョイという小さな入り江にある三つ星レストラン。45席しかないシートに世界中から年間200万件もの予約希望が殺到する「世界一予約のとれないレストラン」。そして、このレストラン、2011年7月30日をもってレストラン業務を終了している。

客の入りも多いのに、どうして?

オーナーシェフのフェラン・アドリア。亜酸化窒素ガスを使い食材を泡状にするエスプーマの開発、食材をカラフルな球体にすることなど、様々な調理法や器具も考案。そんな彼の根底にあるものは、「常に客に驚きを提供する」ということ。その為に彼はエル・ブリを“料理研究財団”に変え、コンテンポラリー料理のさらなる進展のために心血を注ぐというのだ。

そんなエル・ブリの裏側にカメラが密着した貴重なドキュメンタリー。アトリエで食材とひとつひとつ向き合い調理法や組み合わせの開発と研究、レストランでのスタッフの動きの指導、お皿を組み上げひとつのコースを作り上げるまで。新しい食感、新しい調理法を編み出そうとする探求の過程は、日々の過ごし方のひとつの指針を与えてくれるようにすら思える。

この作品を観ていると、フェランの作り出すものに、どことなく日本的な要素が散りばめられているというのが分かるのだが、「壬生」に行って、感動された経験もお持ちとのこと。壬生は、お稽古料としてお金をとって、室礼やらも教えてくれるような完全会員制の日本料理店なのだが、確かにあの店のプレゼンテーションにはフェランが痺れてしまいそうな要素がある。壬生ほどの教育的指導がある料理屋ではないが、素材をただ美味しく調理するところに留まらず、食材のギリギリを引き出そうとする姿勢、コース全体でひとつの世界観を表現しようとするところなどは、エル・ブリにも見られるのだ。

その料理に賛否両論あれど、前人未到の領域に挑むフェランの姿勢に人は好奇心をそそられずにはいられない。

映画自体も、余計なナレーションや、大袈裟な音楽もなく、 安心して鑑賞ができる。幅広い層の大人にお薦めできる映画である。



エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン