現在、Ameba BlogよりコンテンツをBoggerに移管しています。
画像、Amazonが綺麗にリンクされていないものは徐々に
対応させていただきますので、ご了承下さい。

20111117

脳に語りかける魔法の道具

週末は、L’Artisan Parfumeur(ラルティザンパフューム)表参道本店に行ってきました。

こ この店員の酒井さん、生命力に溢れる稲森いずみ。とーっても可愛い(大人可愛いってこういうことを言うんです!)。そして、香水を愛しておられます。店員 四天王のひとりです。お店が少し混み合っていたのですが、酒井さんは本当に丁寧で、でも遠過ぎず、「もっと聞いていたい!」と思うようなお話をたくさんし て下さるのです。

初の訪問ながら1時間近くお話したでしょうか。ラルティザンパフュームがずっと気になっていてkitajikoさんの記事で思わず駆け付けてしまったことからお話を始めました。

酒井さんが第一印象で、私に抱いたイメージは、秘めたる情熱、控えて人目を惹き付けるということで、「バラ泥棒」をオススメされました。バラの香りに、ハーブ、アンバー、サンダルウッドが深みを加え、知的で洗練された印象です。

kitajiko さんお気に入りの「地獄通り」と女性像に置き換えて比べてみましょう。「地獄通り」が内に向かい、創造性を昇華する女性なら、「バラ泥棒」はクセのある男 性の側で魅力が光る女性のイメージです。中途半端な男はバラの刺で刺すけれど、「この男なら」と思えば猫のようにすっと体を刷り寄せる印象だそう。

な る ほ ど。

『調香師の手帖』の話、ラルティザンパフュームのそれぞれの香水にまつわる話、レザーの香りと「バラ泥棒」の話、ジュースキントの小説の話、ヌーヴェル・ヴァーグの話……。

「無いものを、あるように想像させる香りの魔法」についてもお話して下さいました。

そ して、話をすればするほど、「バラ泥棒」推しです。クラシカル、表情の多彩さ、奥行き、そんな印象も持って頂いたようなのです。「バラ泥棒」が「バラ泥 棒」たる所以は、雷に撃たれて散ったバラ。盗まれたバラ。バラという、他の花と一線を画す華やかさを持ちながら、それが全面に出ないところに、この香水の特徴が出ているそうです。

50ml(¥12,600) と100ml(¥16,800)で、大きい瓶がお得なのですが、また、お話したいので、小さい方のボトルを買ってしまったのは、ここだけの秘密です。で も、この瓶がなくなる前に、「バラ泥棒」マリアージュさせるためのものを買いにいってしまいそうです。だって、他の瓶の香りのイメージも聞きたいっ。

あー、、久しぶりに惚れました。ブランドと店員さんに!

HP:L’Artisan Parfumeur
ブログ:ラルチザンパフュームの庭

酒井さんとお話をする前に、ぜひ下記の作品に触れてみて下さい。
パフューム スタンダード・エディション [DVD]パフューム スタンダード・エディション [DVD]

ギャガ・コミュニケーションズ 2007-09-07
売り上げランキング : 22382

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

18世紀、フランスを舞台にした映画です。何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける臭覚を持ちながら、自身には体臭がないグルヌイユ。

やがてグルヌイユは、パリの香水調合師バルディーニに弟子入りして香水の作り方を学び、もっと高度な技術を持つ職人の街、グラースへと向かいます。グルヌイユが求める至高の香水。それは誤って死に至らしめた赤毛の少女の香りでした。

グルヌイユは運命の香りと再会します。それは裕福な商人の赤毛の娘が放つ香り。脂に香りを移す「冷浸法」を習得したグルヌイユは、次々と娘たちを誘拐し、殺し、髪を刈り落としていきます。

一部、冷静に観ると「プッ」と噴出したくなるシーンがありますが、映画に入り込めていた場合は、そこにもかなりの共感があるはず。好きな映画です。

3D、4Dなんて言われて、画面から映像が飛び出したり、風が吹き付けたり、そんな機能面で進化している映画館ですが、私、それ、間違った方向に努力している と思います。どれだけ観客のからだを叩き起こせるかが重要で、例えば、この映画のように映像で香りを感じさせる仕掛けをたくさん施すのが、正しい努力なの ではないかと。どんな舞台より能でぶっとんでしまいそうな情報量を受け取っているので、尚更、そう思います。


グルヌイユは『宇治拾遺物語』の絵仏師良秀や、『夜長姫と耳男』の耳男にも通じます。

と てつもない才能のある人間がいたら、才能が認められていない人間は、その栄養分になっても仕方が無いと、このグルヌイユの殺人を心のなかで認めている自分 がいます。吸い取られて、食われて、心身が崩れる人間はその程度なのです。殺される人間は最高の芸術品になれたことに感謝こそすれ、憎むような話では無い のです。

触媒があってはじめて、エネルギーの巨大な人間の才能は引き出しきれるような気がします。エネルギーの巨大な人間に巻き込まれ て、そのエネルギーを理解しつつ、生き残れる人間には「引き立てる」「引き出す」という才能もあるのかもしれませんが、例えばピカソは絵を描く原動力に なった女性たちをほぼ全員殺してしまっていますね(勿論、直接、手を下したわけではありません)。

Perfume: The Story of a MurdererPerfume: The Story of a Murderer
Patrick Suskind

Penguin Books Ltd 2006-11-30
売り上げランキング : 108442

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
パトリック・ジュースキントの原作。この作品は是非とも洋書で。

調香師の手帖 香りの世界をさぐる (朝日文庫)調香師の手帖 香りの世界をさぐる (朝日文庫)
中村 祥二

朝日新聞出版 2008-12-05
売り上げランキング : 68512

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
これも、ほんっとうに面白いです。少し分厚い文庫ですが、酒井さんから面白い話を引き出すには、これくらいいっておくことをオススメします。

まいねーも書いておる。
Bois Farine (ボアファリヌ)