ローズマリーのにおいが強く香る時間に一緒に表に出ると、その数字が変わる。
いつもひとりで歩いてばかりだから、顔をあげた先に、きみの顔があるのが嬉しい。そこからバイバイをあいまいに言い合う場所まで約14分。他愛のことを話しているけど、話の内容はおぼえていない。歩幅の広いきみが、ほんの少し幅を狭めてくれているような気がして、一緒にいられることが嬉しくて、まったくおぼえていない。
そこからタクシーに乗り込むと、980円。
ずっと一緒にいたい。じわじわときみといない時間が押し寄せてくる。日常の些末なできごとの殆どは、神経質な私ひとりが向き合うには大抵不愉快で、それに飲まれぬよう、出来る限り優しく、あたりが柔らかくあろうとする自分は、二酸化炭素を取り込み酸素を吐きだす道端の植物と大差ない。
