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20190305

A24

ダニエル・カッツ、デヴィッド・フェンケル、ジョン・ホッジスの3人によって2012年8月20日に設立されニューヨークを拠点とするA24。インディペンデント系の映画やテレビ番組を製作しながら、映画への出資・製作・配給を行っている。

大手映画会社の取り扱いでは、過去の実績がないオリジナル脚本による作品は敬遠される傾向にある。ベストセラーや漫画を原作とする作品、シリーズ物やその続編、過去のヒット作品のリメイクやリブート、スピンオフなど、過去の興行データや出版の売り上げ実績などのような裏付けを持つ作品ばかりがラインナップになりがちである。

大手映画会社のように潤沢な資金調達ができないことが多いが、映画のために書かれたオリジナル脚本を低予算で映画化しようとしているのが、インディペンデント系映画会社ん。

ハリウッドだと平均製作費は現在50億円を超えるとも言われているが、A24のようなインディペンデントの映画会社は、製作費15億円前後の低予算作品を製作・配給。国際映画祭での評価を基盤にしたマーケットを開拓してきたという経緯がある。 

A24が初めて配給した作品は、2013年のコメディ映画『チャールズ・スワン三世の頭ン中』。製作・監督・脚本のロマン・コッポラは、『ゴッドファーザー』(72)のフランシス・フォード・コッポラ監督の息子で、ソフィア・コッポラの兄にあたる。そして、この映画を製作したのも父・フランシスの映画会社アメリカン・ゾエトロープだった。これらの縁によって、新興映画会社であるにもかかわらず、A24はソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』を同年に配給することへと繋がってゆく。 

A24は日本とも縁があり、『ブリングリング』には東北新社が製作に参加。青木ヶ原樹海を舞台にしたガス・ヴァン・サント監督、マシュー・マコノヒー主演の『追憶の森』(15)では、渡辺謙が重要な役で共演している。そして『ブリングリング』はカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門、『追憶の森』はコンペティション部門に出品。また、ハーモニー・コリン監督の異色青春映画『スプリング・ブレイカーズ』(13)や、全編ほぼ一人芝居で車内のトム・ハーディを描いた『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(13)はヴェネチア国際映画祭で上映されるなど、設立初期から個性的で芸術性の高い作品を主要国際映画祭へ積極的に出品していたことを窺わせる。 転機となったのは2016年の第88回アカデミー賞。A24が配給した『ルーム』が主演女優賞、『エクス・マキナ』(15)が視覚効果賞、エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー『AMY エイミー』(15)が長編ドキュメンタリー映画賞に輝いたのだ。中でも『エクス・マキナ』は、アナログな手法を取り入れた特殊効果が評価され、同じく候補となっていた『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』(15)や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)、『オデッセイ』(15)といった強豪の大作映画に打ち勝ったのである。 さらに快挙だったのは、この3本が純粋なアメリカ映画ではなかった点。『ルーム』はカナダ・アイルランド・イギリス・アメリカの合作。『エクス・マキナ』と『AMY エイミー』はイギリス映画だったのだ。ハリウッド映画界によるハリウッド映画界のためのお祭りでもあるアカデミー賞授賞式。A24は誰も見向きもしなかったアメリカ国外の映画をアメリカ国内で配給・公開したうえで高い評価を獲得し、結果、受賞するに至ったのである。しかも設立間もない新興の映画会社であることは、作品に対する“目利き”を世に知らしめたのであった。そして、翌年の第89回アカデミー賞では『ムーンライト』が作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門で受賞。以降、A24は年間20本前後の作品を配給・製作するようになる。つまり、およそ2週に1本の割合でA24の関わった新作が全米の映画館で現在公開されている。