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20140312

桃始笑ということばを知った日

昔の日本のひとは、グレゴリオさんのつくった暦ではなくて、月のうたや、方位の声を聴いていた。それは、広い広い中国から教えてもらった時間との手の繋ぎ方でもある。

「桃始笑(もも はじめて わらう)」は、七十二候(しちじゅうにこう)のうちのひとつ。一年を二十四で区切った二十四節気を、さらに大体5日づつで分けていく。3月10日から14日ごろあたり、有名な「啓蟄」の次が「桃始笑」。桃の開花日です、ということ。そんなふうに、七十二のそれぞれの名前は、気象の動きや動植物の変化を知らせてくれる。二十四節気は古代中国のものがそのままだけど、七十二候の名称は、日本に合うように、江戸時代の渋川春海さんなどの手によってアレンジされている。

とても気持ちのいい温度のお風呂に入ると、「ずっとここにいたい」って思う癖が小さい頃からある。だけどお湯はどんどん冷めるし、お風呂はお風呂場から動いてはくれないし、わたしは水中で暮らせる生き物ではないから、なるたけスッとあがって、パジャマに着替えて、眠って、何事もなかったみたいに次の日を迎える。

「桃始笑」という言葉を知った日も、そんな日だった。晴れていて、好きな場所に行けて、好きなひとといた。過去を振り返ったり、未来をつくろうとするんじゃなくて、この体に、全てある感覚だった。たまには、何者かにならなきゃって焦ったり、もっと頑張らなきゃって思い癖を発揮したり、心が乱れてがしゃんと落としたくなったりしてしまうこともあるかもしれないけれど、何度も何度も味わっているあのお風呂の温度が、わたしの幸せなんだって、覚えておこう。